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リッチで拡張性に優れたメディア プラットフォームの構築

Windows では、ユーザーがビデオやオーディオを楽しむための幅広いテクノロジが提供され、開発者は豊富な API を通してこれらのテクノロジを利用することができます。この記事では、デスクトップ アプリと Metro スタイル アプリの両方について大幅に改良された Windows のメディア プラットフォームに、コンシューマーと開発者の両方の視点から迫ります。メディア再生を取り巻く状況は Windows 7 のリリース時と比べて大きく変化しています。ストリーミングの重要性や、所有コンテンツをより幅広いデバイスで再生することへの需要は増しており、同時にメディア再生によるバッテリ消費量を大幅に削減することが求められています。Windows 8、そしてもちろん Windows RT にも組み込まれているこれらの新機能では、コンシューマーと開発者の両方に対して業界をリードするレベルのサポートを提供することを目指しています。この記事は、Media Platform and Technologies (メディア プラットフォームおよびテクノロジ) チームのグループ プログラム マネージャーである Scott Manchester が執筆しました。–-Steven


映画鑑賞、ビデオ チャット、音楽の再生といったリッチ メディアの利用は、今日私たちが PC を利用する中で最も一般的かつ楽しい活動の一つです。今回は、幅広いマルチメディア アクティビティを可能にすると共に、それらの機能を拡張性のあるメディア プラットフォームを通してサード パーティの開発者に提供するために Windows 8 で行われた取り組みについてお話ししたいと思います。

Windows 8 のメディア プラットフォームは、次の 3 つの目標を念頭に設計されました。

  1. 最大限のパフォーマンス: ハードウェアの能力をフルに活かした高速で応答性に優れたメディア再生を実現し、かつ PC のバッテリ寿命を最大限に延ばすことを目指しました。
  2. シンプルな開発と拡張: 革新的なカスタム メディア アプリの登場を助けるため、拡張がしやすく、さまざまなアプリケーションに合わせて簡単にカスタマイズできるようなプラットフォームを提供することを目指しました。
  3. 幅広いシナリオへの対応: これらを通して、さまざまな音楽、ビデオ、コミュニケーション、その他のマルチメディア アプリを可能にする、パフォーマンスと効率性に優れ、拡張性に富むプラットフォームを実現します。

これらの目標を意識して、Windows プラットフォームのメディア エクスペリエンスの刷新に臨みました。

より高速で応答性に優れたメディア エクスペリエンス

どのような種類のユーザー エクスペリエンスにおいてもパフォーマンスは重要な要素ですが、マルチメディア関連のシナリオではその重要性は特に高まります。動画はリアルタイムに再生でき、音声によるコミュニケーションは即時的に利用できる必要があります。なおかつ、これらの処理によるバッテリの消費は最小限に抑えなければなりません。

パフォーマンスを測定する際に指標となるのは、タスクを処理する際にシステムに要求する時間、演算リソース、そしてメモリの量です。これらをすべて最小限に抑えることを目指しました。メディアのパフォーマンスについての目標は、オーディオおよびビデオの再生、トランスコード、エンコード、およびキャプチャに注目して設定しました。

動画の効率的なデコード処理

あらゆるメディア関連シナリオにおいてバッテリ寿命や電力消費量を改善するため、新しくより高速なエクスペリエンスの実現に向けてシリコン チップ業界のパートナー各社と協力を続けています。Windows 8 認定 PC で実行される Windows 8 システムでは、一般的なメディア フォーマットの動画のデコード処理は、専用のハードウェア サブシステムにオフロードされます。メディア処理専用のハードウェアでは、CPU よりもずっと効率的にメディアのデコード処理を行うことができるため、CPU 使用率を大きく引き下げることができ、動画の再生はスムーズになり、バッテリ寿命も向上します。これによって、再生、トランスコード、キャプチャなど、動画のデコードを要するすべてのシナリオにおいてパフォーマンスが向上します。

以下の図は、720p の VC1 および H.264 形式の動画再生時と、Web カメラによるキャプチャ映像のプレビュー時の平均 CPU 使用率を、Windows 7 と Windows 8 とで比較したものです。

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Windows 7 と Windows 8 とでの CPU 使用率比較。WMV 形式のデコードでは Windows 7 では 32%、Windows 8 では 14%。H.264 形式のデコードでは Windows 7 では 30%。Windows 8 では 13%。キャプチャ映像のプレビューでは Windows 7 では 30%Windows 8 では 13%。

動画処理のオフロードに加え、Web カメラのキャプチャ処理でのパフォーマンス向上に寄与しているのは、DirectShow Capture API から、大幅に最適化された新しい Windows 8 メディア ファンデーションの Capture API への移行です。また、H.264 および VC-1 形式のコンテンツのソフトウェア エンコーダーにも改良が加えられており、CPU を使ったエンコード処理を (それが最適な場合に) 行う際の速度と電力効率が向上しています。

オーディオ再生時のバッテリ寿命向上

Windows 8 で行われたメディア パフォーマンス改良点のもう一つの例として、オーディオ再生時のバッテリ寿命 (あるいは単に電力消費量) の改善が挙げられます。前述の動画処理のオフロードと同様にオーディオ パイプラインのオフロードが可能になっているほか、オーディオ再生パイプラインが大きく改良され、定常的な再生時の効率性が高まっています。オーディオ データをバッチ化して大きな塊にまとめ、その塊の処理をまとめて同時に行うことで、CPU をスリープ状態にすることのできる時間が 100 倍以上 (10 ミリ秒から 1 秒以上) に増え、オーディオ再生時のバッテリ寿命が劇的に向上しています。

もちろん、この方法ではバッファー処理の増加によって遅延が増すため、すべてのシナリオにおいて最適というわけではありません。この後のコミュニケーションについてのセクションでは、こういったトレードオフや、各シナリオへのメディア スタックの対応方法について詳しく説明します。

オーディオおよびビデオのオフロードはあくまで一例で、Windows 8 では、デスクトップ アプリと Metro スタイル アプリの両方において CPU 使用率やメモリ使用量を抑制し、バッテリ寿命を改善するため、他にもさまざまな点でメディア スタックの最適化が行われています。

メディア関連の多様なシナリオへの対応

パフォーマンスはプラットフォームの重要な要素ですが、パフォーマンス向上によって生きてくるさまざまな機能も、それに劣らず重要です。Windows 8 に含まれるこういった機能としては、近代的なビデオ フォーマットのサポート、低レイテンシのコミュニケーション ストリーム、外部メディア デバイスへのシームレスな接続などがあります。

プラットフォーム上のトレードオフ

多くのシナリオに対応する単一のメディア プラットフォームを開発する場合に課題となるのは、プラットフォームのさまざまな目標が互いに競合するということです。たとえば、コミュニケーションではレイテンシ低減が求められますが、オーディオ/ビデオのエンコーディングと再生で品質やパフォーマンスを向上させるためにバッファー処理を行えば、レイテンシは増します。この後のいくつかのセクションでは、こういった課題について、Windows 8 で取り組んだ以下のようなシナリオを通して説明していきます。

  • コミュニケーション (Skype、Lync など)
  • 動画再生と近代的なフォーマットのサポート
  • 動画の向きの自動調整
  • プレミアム コンテンツの再生
  • シームレスなオーディオ切り替え
  • メディア エクスペリエンスを追加スクリーンに
  • 先進的なメディア技術

シンプルな開発と拡張

これらのエクスペリエンスに共通しているのは、マルチメディア プラットフォームに組み込まれた拡張性です。ユーザーがメディアを利用する際の使用ケース、メディア フォーマット、コーデック、保護メカニズム、処理方法などは多岐にわたるため、Windows では、さまざまな状況に合わせてカスタマイズされた優れたアプリや Web サイトを開発しやすいようになっています。

この後のいくつかのセクションではさまざまなメディア関連シナリオについて扱いますが、同時に、これらのシナリオが開発者やサード パーティのパートナーにとって拡張しやすいものにするために行った取り組みについてもお話ししていきます。それでは、Windows 8 開発の際にターゲットとなったさまざまなシナリオについて詳しく見てみましょう。

コミュニケーション

PC、特にモバイル デバイスを使ったリアルタイムのコミュニケーションは、過去 10 年で非常に大きな進歩を見せました。Windows のユーザーは、Skype や Lync といったサービスを使って 1 日あたり何十億分にものぼる音声通話やビデオ通話を行っています。TeleGeography (英語) の推定値によれば、Skype 対 Skype の国際通話 (ビデオ通話を含む) は 2011 年に 48% 増加し、1,450 億分に達しています。Windows 8 では、すべての PC でのビデオ/オーディオ通話のエクスペリエンス改善にも大きく投資が行われています。この目標を達成するため、次の 2 つの点に絞って取り組みました。

  • 低レイテンシのメディア キャプチャ/レンダリングの組み込みを実現: コミュニケーション アプリでは低レイテンシが不可欠であるため、Windows は低レイテンシでのメディアのキャプチャと OS に向けた再生をサポートしています。
  • HD カメラのサポートによりビデオ通話のエクスペリエンスを強化: コミュニケーションのエクスペリエンスをよりリアルで楽しいものにするため、Windows では HD カメラによる高解像度のビデオをサポートしています。

低レイテンシの実現

ユーザー間の通話では、ほぼ即時的なレスポンスが求められます。このため、コミュニケーション システムではエンド ツー エンドの遅延 (レイテ���シ) を最小限に抑えようとします。オーディオ/ビデオの再生では、処理量の急増やネットワーク トラフィックの遅滞に対応し、電力消費量を抑えるため、バッファー処理を行うことが一般的です。しかしバッファー処理ではオーディオ/ビデオの遅延が生じるため、ユーザーにとってはレイテンシが発生することになります。Windows 8 では、メディア再生向けに最適化されたシナリオとコミュニケーション向けに最適化されたシナリオの両方に対応するよう、メディア プラットフォームが設計されており、再生モード (バッファー処理を多用し、より幅広い状況に対応) とコミュニケーションに最適化されたモード (遅延を抑制) に切り替えて、メディア インフラストラクチャを使用することができます。

TIA/EIA 920 の標準 (英語) によると、実用可能なリアルタイム コミュニケーションのエクスペリエンスを実現するには、メディア処理パイプラインに由来する一方向のオーディオ レイテンシは 100 ミリ秒以内に抑える必要があります。このことを踏まえ、私たちは次の図に示すようなパイプラインのエンド ツー エンドのレイテンシを計測するテスト環境を設計しました。

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送信者と受信者の間のレイテンシを示す図。キャプチャ デバイスで生じるカメラ レイテンシ、キャプチャ パイプライン (キャプチャ元、エンコーダー、ネットワーク シンク) でのレイテンシ、再生パイプライン (ネットワーク ソース、デコーダー、ビデオ プロセッサ、レンダラー) でのレイテンシ、ディスプレイやオーディオ スピーカーで生じるデバイス レイテンシが含まれる

レイテンシ低減のために最適化を要するさまざまなコンポーネント

ビデオによるコミュニケーションの場合、エンド ツー エンド、あるいは "グラス トゥー グラス" のパイプライン レイテンシを計測します。これは、1 つのビデオ フレームがカメラによってキャプチャされ、対応ビデオ フォーマットにエンコードされ、ネットワーク ループバック インターフェイスを介してストリーミングされ、デコードされ、最後にディスプレイによってレンダリングされるまでに生じる遅延を指します。

下の図は、メディア パイプラインを低レイテンシ モードで使用した状態で PCM オーディオのキャプチャとレンダリングを行った結果を示したものです。最初の山は送信側での発声、2 つ目の山はその音声が受信側に届いたことを示します。両者の間の遅延は 65 ミリ秒で、目標の 100 ミリ秒を十分にクリアしています。

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オーディオ転送の送信側と受信側とで遅延が 65 ミリ秒になっていることを遅延を示すグラフ

PCM オーディオのエンド ツー エンドのパイプライン レイテンシ: 低レイテンシ モード

次のグラフは、ビデオ フレームがキャプチャされ、H.264 形式でエンコードされ、ストリーミングされ、デコードされ、さまざまな解像度で表示された場合のパイプライン レイテンシを、再生モードとコミュニケーション向けに最適化されたモードとで比較したものです。グラフ上の緑色の線は、総レイテンシの目標値である 145 ミリ秒 (TIA/EIA 920 が指定する実用可能なリアルタイムのビデオ通話に必要な水準) を示したものです。

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VGA、SVGA、720p、1080p 各解像度の比較。いずれの場合も、再生モードでは 500 ミリ秒を超えている一方、低レイテンシ モードでは 100 ミリ秒前後と、目標値である 145 ミリ秒をクリアしている。

ビデオ フレームは秒間 30 フレームでキャプチャされ、H.264 形式にエンコードされる

再生モードでは、パイプラインの平均レイテンシは 575 ミリ秒ほどです。この遅延はスムーズな動画再生エクスペリエンスには必要なものですが、リアルタイムのビデオ通話では認められないレベルです。一方、低レイテンシ モードでは、どの解像度でも余裕を持ってレイテンシの目標値をクリアしています。

HD ビデオ通話のサポート

もう一つ、Windows 8 PC でのコミュニケーション品質改善に向けた取り組みの例として、OS での HD カメラのサポートが挙げられます。新しいクラス ドライバーが透過的にアプリケーションと連動し、HD ビデオ機能をサポートします。さらに、ビデオのデコード処理には、以前にご紹介したさまざまなハードウェア アクセラレーションが活用され、コミュニケーションのシナリオに対応します。

Windows 8 向けに設計された PC と Windows 8 との組み合わせでは、一貫性と品質を兼ね備え、ハードウェア アクセラレーションを活かし、電力効率にも優れたメディア コミュニケーション エクスペリエンスが実現します。メディア プラットフォームへの大幅な投資により、パイプライン レイテンシが改善されているほか、H.264 カメラのサポートが追加されており、ユーザーは高品質な HD ビデオで家族や友人とコミュニケーションをとることができます。

Metro スタイル アプリ向けのビデオ/オーディオ サポート

Metro スタイル アプリでのネイティブ メディア フォーマットのサポートについての私たちの主な目標は、ユーザーやアプリ開発者が信頼できるような安定して高品質な再生エクスペリエンスを、幅広いフォーム ファクターの PC で実現すると共に、次のような一般的なシナリオで利用される近代的なフォーマットに対応することでした。

  • Web 上の HTML5 ベースのエンターテインメント
  • 一般的なスマートフォン、コンパクト カメラ、AVCHD カメラなどで撮影されたホーム ムービー
  • 一般的なサービスを利用した音楽、映画、テレビ番組のストリーミング

以下の表は、Metro スタイル アプリへの対応が組み込まれているビデオ/オーディオ フォーマットを示したものです。Metro スタイル アプリでの使用が推奨されているフォーマットは、ハードウェア製造元各社との緊密なパートナーを反映したもので、各種 PC フォーム ファクターでの予測可能なハードウェア アクセラレーションや、再生だけでなく、キャプチャ、ストリーミング、トランスコーディングなどを含めた予測可能なエンド ツー エンドのシナリオ パフォーマンスが考慮されています。

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メディア ファイルとストリーミングのフォーマットを示した表

Windows 8 は、MPEG-4 (H.264 ビデオと AAC オーディオの組み合わせによるものが一般的) に対する優れたサポートを提供します。DivX や Xvid など、いくつかの一般的なコーデックでは MPEG-4 Part 2 標準が実装されているため、これらのファイルの多くは Metro スタイル アプリで高品質な再生が可能です。MPEG-4 Part 12 標準ベースの近代的な MOV ファイルについても同様です。これには iOS デバイスでキャプチャされた動画が含まれます。Fragmented MPEG-4 や 2K/4K の解像度も利用できるようになっています。MPEG-2 と DVD の再生については以前の Windows 8 Media Center に関する記事でご紹介したとおりです。

Windows 7 での開発時には、Windows でネイティブにサポートするコーデックと拡張によって利用できるフォーマットについて、かなり踏み込んだ議論がありました。その後コーデックを取り巻く状況は変化を続けており、H.264 をはじめとする明確に定義され幅広くサポートされた少数のフォーマットにまとまっていく傾向が安定して見られます。知的財産権やハードウェア サポートなどについて考えれば、これは合理的な流れです。ブラウザーでさえも、こちらの記事 (英語) にあるように、HTML5 によって同様の移行を遂げつつあります。しかし一方で、個々のユーザーはさまざまな理由から異なるフォーマットを好むということもわかっているため、Windows 8 のアプリ開発では開発者が自分の希望するフォーマットを使用できるようにしたいと考えました。Windows 8 のメディア プラットフォームは拡張性に優れているため、先進的なユーザーのコミュニティや一部の開発者に人気のある FLAC、MKV、OGG などのフォーマットについては、Metro スタイル アプリの一部としてコーデックをパッケージ化することができます。

動画の向きの自動調整

従来型のカメラ、スマートフォン、タブレットなどへのビデオ録画機能の普及により、ビデオ キャプチャは縦長でも横長でも行われるようになっており、近代的なタッチ ベースのインターフェイスにより、「正しい向き」というものがなくなりつつあります。動画を撮影した後、PC で表示してみて初めてカメラが横向きや逆さまになっていたことに気付き、苛立った経験をお持ちの方も多いでしょう。ビデオのスキャン パターンは固定されているため、再生してみると正しい向きに表示されないことがあります。

この問題を解決するため、MP4 や ASF といった主要なファイル フォーマットで、録画したビデオをストレージに保存する際に、カメラがメタデータとして向きの情報を書き込むケースが増えています。

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メタデータの補助がないと画像が横向きに表示されるが、メタデータがある場合は正しい向きで表示される

個人撮影の動画を Windows PC で再生する際のエクスペリエンスを向上させるため、この問題に対しては次のような改良を施しました。

  • MP4 および ASF (VC-1、WMV) のビデオで向きのメタデータをサポート
  • 向きのメタデータを含むビデオは再生時に自動回転
  • 向きのメタデータを含むビデオのサムネイルも自動回転
  • ビデオ キャプチャ機能を持つ Metro スタイル アプリは向きのメタデータを容易に読み込み/書き込み可能

プレミアム コンテンツ

Windows 8 で大きく投資したもう一つの点として、プレミアム コンテンツのシームレスな再生があります。インターネットで消費される動画コンテンツは当初ユーザー生成コンテンツが一般的でしたが、昨今のインターネット上のビデオの増加は、その多くが "プレミアム コンテンツ" によるものです。これは、オンデマンドでのストリーミング ビデオによる映画のオンライン購入や、広告を利用したテレビ番組の配信などを指します。IHS Screen Digest の調査に基づく情報 (英語) によれば、2012 年に米国でストリーミング配信される有料ムービーの数は、2011 年の視聴数の 2 倍以上に相当し、DVD と Blu-Ray でのムービー再生数を 10 億以上上回る、34 億本に達する見込みです。

プレミアム ビデオ コンテンツの利用要件には、他のビデオ コンテンツと同様の点も多くありますが、最適なエクスペリエンスを提供するためには、それ以外に 2 つの重要なプラットフォームの機能が必要です。可変ビットレートによるストリーミングと、コンテンツ保護です。

可変ビットレート ストリーミング

可変ビットレート ストリーミングでは、ネットワークやリソース使用率のさまざまな状況に応じて最適なビットレートを使用することによって、よりスムーズで応答性に優れたビデオ再生エクスペリエンスを実現します。この方法でビデオの最初の何フレームかを低めのビットレートで転送することにより、再生開始までの時間やシークに要する時間を大幅に短縮することができます。ネットワークやデバイスの状況が変われば、PC はビットレートの引き上げや引き下げを要求し、バッファー処理を最小限に抑えたり、ビデオの品質を上げたりすることができます。

Windows 8 のメディア ファンデーション プラットフォームが備える拡張性により、アプリはカスタム メディア ソースや可変ビットレートのメディア ソースを利用して新しいフォーマットに対応することができます。また、カスタム メディア ソースやストリーミング プロトコルで、ハードウェア オフロードやコンテンツ保護を使用することも可能です。

Windows Azure メディア サービス担当チームでは、Windows の拡張性モデルを利用して、Smooth Streaming Client SDK for Metro style apps (英語) の構築に取り組んでいます。スムーズ ストリーミングは、高品質なマルチ ビットレート コンテンツを配信し、ビデオ オンデマンド、Live、リニア TV、ダウンロード アンド プレイなどの実現を目指す、Microsoft の取り組みです。

コンテンツ保護

インターネットでプレミアム ビデオ コンテンツを配信するサービスの多くでは、コンテンツ保護が適用されます。これは通常、コンテンツの所有者 (e.g. 映画スタジオ、テレビ局など) の要請によるものです。Metro スタイル アプリでの保護コンテンツ再生を可能にするため、Microsoft では、プレミアム コンテンツ サービス向けに PlayReady Client SDK (英語) を提供しています。PlayReady はストリーミングとダウンロードの両方に対応しており、前述の IIS Smooth Streaming Client SDK と PlayReady Client SDK とのシームレスな連携により、サービス各社はコンテンツ保護が有効なストリーミングのエクスペリエンスを簡単に構築することができます。

もちろん、業界では現在、他のコンテンツ保護テクノロジも使用されています。可変ストリーミングと同様に、メディア ファンデーションの拡張性モデルによって、サード パーティはハードェア アクセラレーションのビデオ デコード処理に、独自のコンテンツ保護システムを組み合わせることができます。独自のストリーミング フォーマットやコンテンツ保護システムを利用する必要があるサービスでも、デコード処理の品質やバッテリ寿命を犠牲にすることなく、自社テクノロジを組み込むことができます。

Windows 8 では、ユーザーが選択できるプレミアム コンテンツ サービスの幅が広がり、ストリーミングとダウンロードの両方に対応した優れたエクスペリエンスと優れたバッテリ寿命が両立した、高品質なプレミアム ビデオ コンテンツをデバイスで楽しむことができるのです。

シームレスなオーディオ切り替え

Windows 8 は多種多様なメディア利用のシナリオに対応しますが、それらのシナリオ間の切り替えをなるべくシームレスで滑らかなものにすることも重要な点でした。複数のオーディオ関連アクティビティがバッティングすることは珍しくありません。たとえば、ストリーミング サービスで音楽を聴いているユーザーが、そのままビデオ クリップの視聴を開始することもあります。Windows 8 では、好きなコンテンツを好きなときにストレスなく利用できるような、クリーンで整理されたオーディオ エクスペリエンスを目指しました。

Windows 8 では、すべてのオーディオ コンテンツを単純に混ぜ合わせた (しばしば意味をなさない) 音声をスピーカーにストリーミングするのではなく、その方が合理的な場合は、一つの音声ストリームを再生するときは別のストリームを一時停止しておくことができます。ほとんどの場合、フォアグラウンドにあるアプリのオーディオが優先的に再生されます。アプリをバックグラウンドに移すと、そのアプリのストリームは停止されます。たとえばゲーム アプリから他の画面に切り替えた場合は、ゲームの音声は止めておきたいことが一般的です。ただし、こういった挙動が望ましくないケースもあります。たとえば、背景で音楽を流しながらメール チェックや Web サーフィンをしている場合などです。こういったシナリオに対応し、意味のある場面ではバックグラウンド アプリのオーディオを聴くことができるよう導入されたのが、再生されるオーディオのタイプを反映する、ストリーム タイプです。

以下はストリーム タイプの一覧とそれに対応するコンテンツ タイプの例を示したものです。

オーディオのカテゴリ

ストリームの例

バックグラウンド
対応

バックグラウンド対応メディア

ローカルまたはストリーミングによるオーディオ再生リスト

はい

フォアグラウンド専用メディア

映画、ゲーム

いいえ

コミュニケーション

Skype、ボイス オーバー IP、ライブ チャット

はい

アラート

アラーム、通知

いいえ

ゲーム メディア

ゲームで再生される BGM

いいえ

ゲームの効果音

銃声、爆発音、キャラクターの会話、その他音楽以外のすべての音声

いいえ

効果音

ボタンの確認音、ビープ、警告音など

いいえ

その他

デフォルトのオーディオ タイプで、バックグラウンドで再生を続ける必要のないすべてのオーディオ メディアで使用を推奨

いいえ

メディア エクスペリエンスを追加スクリーンに

Windows 7 では、対応する外部デバイスにエクスプローラーや Windows Media Player からメディア ファイルをストリーミングできる、"リモート再生" 機能が発表されました。Windows 8 ではこの機能がさらにシンプルで使いやすいものとなっており、個人的メディア コレクションや HTML5 メディアを、家の中のリモート再生対応デバイスと簡単に共有することができます。リモート再生機能の主旨は、個人のコンテンツを中心としたリッチでソーシャルなエクスペリエンスを構築することにあります。たとえば、家族や友人との写真の共有、ホーム パーティーでの音楽のストリーミング、インターネットに公開されているユーザー生成のビデオ コンテンツの視聴といった利用方法が考えられます。エクスペリエンスは既存の Web サイトの HTML5 コンテンツやユーザーの個人的なメディア コレクションと緊密に連携するよう、根本から設計されており、メディアが Windows PC やタブレット内のローカル ライブラリに保存されている場合も、別の家庭内 PC やネットワーク接続されたメディア サーバー、あるいはクラウド上の Web サーバーに保存されている場合も、同じように楽しむことができます。

Windows 8 では、リモート再生は従来よりも発見しやすくなり、多種多様な Metro スタイル アプリを通して、一貫性のある高品質なエクスペリエンスを利用することができます。ユーザー エクスペリエンスの改良点としては、たとえば次のようなものがあります。

  • セットアップの改善: 共有を許可しているホーム ネットワーク (ホームグループ) では、リモート再生対応デバイスは自動的に検出され、PC にインストールされます。
  • デバイスのエクスペリエンス向上: Metro スタイル アプリは、Windows 認定のリモート再生レシーバーとのみ連動します。これらのデバイスは、近代的なメディア フォーマットへの対応状況が確認されているほか、DLNA 標準に準拠しており、パフォーマンス面でも優れています (年内に提供予定の更新プログラムを適用した Xbox 360 もこれに加わります!)。Windows 7 で導入されたデスクトップ エクスペリエンスがエクスプローラーのリボンに追加され、DLNA DMR デバイスは引き続きすべてサポートされます。
  • 発見が容易: リモート再生にはデバイス チャームからアクセスできるため、リモート再生機能をサポートするすべてのアプリから簡単に利用することができます。画面右端から内側に向かってスワイプし (または画面右上の角にマウス カーソルを合わせ)、デバイス チャームを選択し、ストリーミング先のデバイスを選択するだけです。
  • Metro スタイル IE への統合: IE によって、HTML5 の音楽、ビデオ、写真を Web から各デバイスへとストリーミングすることができます。
  • 新しい音楽、ビデオ、およびフォト アプリと連動: アプリは、さまざまなソースやコレクションから個人の写真、音楽、ビデオをストリーミングすることができます。

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タブレット PC にビデオと [デバイス] ペインが表示されており、同じビデオが別の画面でも再生されている

ビデオ アプリからのリモート再生

また、開発者がアプリや Web サイトで簡単にリモート再生を使用できるようにすることも重視しており、すべての Metro スタイル アプリがリモート再生コントラクトを通してこの機能を利用できます。Xbox 360 は年内に提供される更新プログラムによってリモート再生に対応する予定です。

先進的なメディア技術

Windows 8 では、新しいコンテンツ タイプの消費が可能になると共に、コンテンツ作成やコミュニケーションの面でも柔軟性が増し��す。Windows 8 で導入されるマルチメディア エクスペリエンスの強化点としては、ステレオ 3D、アクセシビリティ、そして DSP エフェクトが挙げられます。

ステレオ 3D ビデオ

ここ数年のうちに、ステレオ 3D (S3D) の市場は、前評判や噂の段階から完成されたコンシューマー製品の段階へと一挙に進化しました。S3D は、別のアングルからキャプチャされた 2 つのビデオを同時に表示し、3D 眼鏡を通して見ることで、1 つの立体的なビデオとして視聴することを可能にするものです。私たちは、個々の 3D 技術の細部を抽象化してエンド ユーザーの PC から切り離したプラットフォームを用意し、そのプラットフォーム上でゲームやビデオ再生のシナリオを実現することにより、Windows 向けに存続可能な S3D 環境を確立することを目指しています。

Windows 8 で S3D を利用するには、DirectX 10 またはそれ以上の GPU と互換ドライバーが必要です。S3D コンテンツの視聴には、S3D 互換のディスプレイが必要です。開発において重視したのは、一貫性のあるユーザー エクスペリエンスで幅広いディスプレイ テクノロジをサポートし、ソフトウェアやハードウェアが育ちやすいプラットフォームを提供することです。その結果、グラフィック ドライバーの力によって個々の S3D ディスプレイ テクノロジの違いは問題でなくなり、ステレオ 3D を利用するアプリに、一貫性のある API 群を提供することが可能になりました。

Windows 8 のメディア プラットフォームは、標準準拠のメディア フォーマットで S3D ビデオをサポートします。オンライン配信で一般的に使用されているフォーマットは、フレーム パッキング メタデータを SEI (Supplemental Enhancement Information) の形で付与された H.264 ビデオで、このため Windows 8 の S3D ビデオにもこのフォーマットが最適です。下の図に示すとおり、左右配置と上下配置の両方のフレーム パッキング方式が、プラットフォームでネイティブにサポートされます。

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2 つの画像を左右に並べたものと、上下に並べたもの

左右配置と上下配置など、さまざまな 3D 入力フォーマットに対応

Web プラットフォームでのメディア利用のアクセシビリティ確保

メディアのアクセシビリティ確保、特にアクセシビリティのニーズを持つユーザーへの対応は、Windows からお客様への重要な約束の一つです。

解釈や追加情報を表示できる字幕は、文字化された音声を好むユーザーや、別言語に翻訳されたテキストを求めるユーザー、聴覚障碍のため文字情報が必要なユーザーに役立ちます。

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ビデオの静止画像に字幕とビデオのコントロール類のほか、字幕オプション (オフ/英語/ドイツ語) が表示されている

Windows 8 での字幕付きのビデオ再生

W3C を通して Web コミュニティ全体が協力することにより、すべての近代的な Web プラットフォームで字幕表示をするための最適な方法が確立されています。これには以下が含まれます。

  • <track> 要素に、HTML5 ビデオ タグの字幕やクローズド キャプションの情報を格納することができます。この機能は Windows 8 に組み込まれており、IE10 やその他の HTML を使ったアプリで、ビデオ タグを使った字幕のサポートが可能になっています。
  • ユーザー コントロールは、ビデオ タグの既定のメディア コントロール上から利用できます。
  • Web コミュニティやテレビ/放送業界のパートナーが一般的に使用している WebVTT および SMPTE-TT フォーマットがネイティブにサポートされます。
  • Windows 8 のメディア プラットフォームは、複数のオーディオ トラックを含むメディア ソースをサポートします。複数の言語のオーディオ トラックをユーザーが自分の言語に合わせて切り替えることができるほか、視覚障碍のあるユーザー向けの音声情報にトラックを使用することも可能です。Metro スタイル アプリは、オーディオ トラックの切り替えや、複数のオーディオ トラックの同時再生が簡単にできるようになっており、たとえば通常のオーディオ トラックに音声による解説を重ねて再生することができます。

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標準的なビデオのコントロールのほか、言語オプション (英語、ヒンディー語、ポーランド語 ) が表示されている

Windows 8 での複数のオーディオ トラックを含むビデオの再生

メディア パイプラインへのエフェクトの追加

Windows 8 のメディア プラットフォームは高い適応性を備えています。その一例として、パイプラインにエフェクト (デジタル信号処理、または DSP とも呼ばれます) を追加することができます。手ブレ補正や Web カメラのプレビューで便利な水平反転など、組み込みのエフェクトがいくつか用意されているほか、アプリケーションからメディア ファンデーションのパイプラインにプラグインして独自の効果を追加するのも容易です。さらに、メディアのデータが効率よくパイプラインを通過するよう配慮されているため、DSP の追加によるパフォーマンスや消費電力への影響も最低限に抑えられます。

まとめ

Windows 8 のメディア プラットフォームは、滑らかで応答性に優れたメディア エクスペリエンスと、バッテリ寿命の確保を両立する設計となっており、音声によるコミュニケーション、オーディオおよびビデオの再生、コンテンツのストリーミングなど、幅広いシナリオで優れたユーザー エクスペリエンスを提供します。Windows のメディア プラットフォームが活躍の場を提供することによって、進化を続けるさまざまなメディア関連アプリケーションが、すべての Windows 8 PC で力を発揮していくでしょう。

最後に、新しいメディア プラットフォームの見どころを簡単に紹介したビデオをご覧ください。

--Scott


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高画質 MP4 | 低画質 MP4

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